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河内 啓成「見えるモノと、見えないモノ」

カフェギャラリースペース 5月の展示のお知らせです。


5/4(金)〜29(火) 

河内 啓成 「見えるモノと、見えないモノ」


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河内氏から詳細なテキストが届けられましたので展示と合わせて
ご覧いただければと思います。



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        見えるモノと、見えないモノ





 ある日デジタル放送の画像がノイズによって乱れた。外は一日激しい雨だった。



 私はピクセルのずれが生じ、乱れた画像を見て「ハイビジョン映像が台無しだな」などと瞬間的には感じていたが、後から考えてみればノイズのようにハイビジョンの映像を乱した状態をどことなく暖かみを覚えるようになっていた。たまに現れるそのノイズは映像を歪めてしまう、言わば情報伝達のお邪魔ものである。しかし、そのお邪魔者のおかげで「見えないモノ」を見ようとする、「無意識的な視覚の世界」をより意識するようになった。

 少し長くなるがヴァルター・ベンヤミンの言葉を引用すると、『クローズ・アップによって空間はひろがり、高速度撮影によって運動が幅をひろげた。物を拡大するということは、単に「これまで」ぼんやり見えていたものを明確にするだけではない。むしろまったく新しい構造をあらわにするのである。

—中略— 映画によってはじめて無意識的な視覚の世界を知ることになるのである。』(「複製技術時代の芸術」ヴァルター・ベンヤミン 1999晶文社)

 私が見たノイズイメージは私に新たな知覚を意識させた。TVモニターを前に見えるモノが、他者と同じ時刻同じ番組映像だとしても全く同一のモノではない可能性を見せたのだ。今まで同じものを見ていると、感じていると疑わなかった世界がまったく変わってしまった。私に見えているモノが他者には見えていない可能性。あるいはその逆。いや、そもそも無意識的には知っていたかもしれないし、実際に同じモノを知覚しているなどとは、思っていないのかもしれないが、それでもノイズが私にそれを意識化させるにはあの乱れ方は十分なのだ。

 そして、リチャード・ドーキンスの「延長された表現型」にも表されるように、人間が作り出すモノには人間の遺伝子の情報が延長されているのだとしたら。やはり、映像のなかにあったノイズもまた延長されたモノとしてとらえることができる。カメラが目の構造を延長しているように、マイクが耳の構造を延長しているように、また、ビーバーのダムや蜘蛛の巣がそうであるように、目に見えるチラツキに似たそれは人の身体性をもっているのだ。私が感じた「暖かみ」はそうした自身の知覚と同じ身体性をノイズに対して無意識的に感じたからかもしれない。



 今回の展示作品「見えるモノと、見えないモノ」は無意識を意識化させる装置でありたいと思い制作した。見ようと思わなければ見えてはこないし、あるいは既に無意識的には知覚されていているのかもしれない。言語化することはそれほど重要ではないのかもしれないし、それどころか言葉にしたとたんにチープに感じられるかもしれない。それでもやはり日頃情報の海にありふれたようなスナップ写真に、デジタルノイズを加えることによって、私たちにとって無意識の世界を深める扉を開ける鍵になるのだと信じている。





河内 啓成

 






河内 啓成 KWACHI KEISEI


略歴
1977  兵庫県神戸市生まれ
 
2001  京都造形芸術大学/芸術学部/美術学科/洋画コース卒業
2002-2006  京都造形芸術大学/美術工芸学科/版画工房助手
版画家 清水博文氏に師事
2009 東京藝術大学TA
       東京医科歯科大学TA
2010 東京藝術大学/大学院美術研究科/芸術学専攻美術教育修了

現在 世田谷学園中学高等学校(美術科教諭)  
   美術教育研究会会員



主な活動
1998
 「第25回ーGodiamo della vita イタリアを歌う、イタリアを描くー」
2000  
 「壁画で飾る難波シティー:ウォールペインティング」
              関西ぴあ企画/難波地下街壁画
 「京都造形大・東北芸工大 デッサンドローイングコンクール」
2001
 「京都造形芸術大額卒業制作展」
 「善の会展」
2002
 「第21回市展『なら』」('02奨励賞 '03市展賞 '04市教育委員長賞)
2003
 「KEISEI KAWACHI Exhibition」
 「ザッツイメージ展」(’04)
 「第22回上野の森美術館大賞展」(’04 '05 '06賞候補)
 「第2回アミューズ・アーティスト・オーディション」
2005
 「KEISE KAWACHI Exhibition」
 「”Spectrum” KEISEI KAWACHI Print Works」
 「Xhibitions # 02 ”イメージにさわるということ”」
2006
 「版画集出版記念展「30×30の窓」('07 ’08 ’09)
2007
 「Pair Ampere」
 「藝大 美術教育7人展」
 「美術教育研究大会 展示発表」
2008
 「エコールド渋谷 藝大ビュッフェ」
 「藝大アートプラザ大賞展」
2009
 「現代』インディペンデントCASO展2009」
2010
 「東京藝術大学卒業/修了作品展」
 「シャッター10」
 「CYBELE 『いま』の豊かな広がり」
 「EXPERIMENTALPRINT」
 「新鋭 版画ミニアチュール展『つながるイメージ』」
 「日本版画協会展」

その他活動
 流通経済大学 ラグビー部 クラブハウス壁画
 日本橋巡りの会企画 シャッターチャンス絵師
           /http://www.ninben.co.jp/meguri/shutter/shutter.html 
 文化庁「文化芸術による相応のまち」支援事業 報告書編集
 ワークショップ(多数)

論文
 修士論文 版画制作における自己の生成 ー「いま」の豊かな広がりを通してー
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by ju-tou | 2012-05-29 17:00 | ギャラリー/展示 | Trackback | Comments(0)